荒川光のブログ

Hikaru Arakawa's blog

運転代行業入門 随伴車による追走のやり方 気を付けたい点10個

運転代行業で必要とされるスキルを、現役代行ドライバー(ただし随伴車専業)の私が紹介していきます。

 

実際に運転代行の仕事をされている方も、これからこの仕事に就こうと考えていらっしゃる方も、客として利用する機会が多い方も、はたまた、たまたま間違えてクリックしてしまってこのページに来たという方も、ぜひ知られざる運転代行業の世界に触れてみてください。

 

今回はお客様の車(以下「客車」)を代行会社の車(以下「随伴車」)が追走していくにあたっての注意点などを、出発から到着までの流れで書いていきます。

 

 

目次

出発時の注意

客車と一般の車を間違えちゃった

 

ところで、追走の出発から到着までの過程で最も注意を要する場面はどこだと思いますか? 

 

いろんな考えがあるでしょうが、私は出発であると考えています。私が随伴車の運転をしていて一番緊張するのも出発の瞬間なのです。

 

では出発時にどんな危険が潜んでいるのか? 何に注意が必要なのでしょうか?

 

まず一つ目は、自分が追いかけていくべき客車と、その他一般の車両とを間違えないように注意しましょうということです。

そんなこと当たり前じゃないかと思われるかもしれません。しかしこれは非常に重要な点なのです。

 

客車と随伴車が2台同時に「せーの」で出発できる場合であれば間違えようはありません。

しかし、混雑した駐車場で、何台も離れたところから客車が出発するという場合、似たような他の車を客車と取り違えて追いかけていってしまうというウソのようなミスが、ごくたまに起こるのです。

病院で患者を取り違えて手術してしまったなどという信じられないようなニュースを聞くことがありますが、どんな種類の仕事でも、しっかりとした確認というのは非常に大切なのです。

 

駐車場の状況によっては随伴車が駐車場の中に入れずに、道路上に車を停めて待機していなければならないこともあります。

客車が横を走り過ぎる瞬間に客車から合図を受けて随伴車も走り出すということがしばしばあるのです。

私などは一度客車からの合図に気が付かず、客車が走り過ぎて行ってしまった後に、いつまでも来るはずのない客車を待ち続けていたということがありました。

 

客車からの合図としては、横を通り過ぎる時にホーンを鳴らす、ドライバーが白い手袋をはめた手を振る、後ろから走ってくる時にパッシングするなどがありますが、様々な事情でそれがうまく伝わらないことがあるものです。

昼間と違って乗っている人の顔が窓から見えにくいということが大きな理由です。

 

随伴車のドライバーが客車の車種、色、できればナンバーなどを出発前に確認しておければ良いのですが、そのような時間的余裕がないことも多く、「ホーンを鳴らして横を通り過ぎる車」=「客車」という不確かな方程式だけを頼りに追走を始めなければならないこともあるのです。

 

あなたにもし残酷なイタズラ心があるのなら、路上に停まって客車を待っているのだろうと思われる随伴車の横を通り過ぎる時に、ホーンを鳴らしてみてください。もしかしたら後ろをついてくるかもしれませんよ・・・。なんて、そんなことやっちゃダメです!

 

でも実際の話、私なども自分が追いかけている車が本当に客車かどうか不安になって、信号待ちで停まったときに車を降りて、前の車が客車かどうか確認しに行ったという経験が何度もあります。

もし間違えたままでその人の家まで付いて行ってしまったら、なんて考えると恐ろしくて震えてきます。

でも、今夜も日本中を走っている随伴車の中には、そんな車の1台や2台あってもおかしくありません。それくらい有りがちな失敗なのです。

 

ですので間違いなく客車であることを確信して追走するために、出発の瞬間には最大の注意を払わなければなりません。

 

 

出発時に多発する事故

二つ目の注意としては、出発時には事故のリスクが高くなるということを挙げておきます。

 

駐車場から道路に出る場合で、例えば片側1車線ずつの道路に右折で出るという場合を考えてみましょう。

頭の中でイメージしてみてください。

駐車場の出口で客車が右ウィンカーを出して停止して、左右からの車の流れが途切れるのを待っているとします。

今右からは車が来ていません。左からは車が何台か来ていますが、1台やり過ごせば次の車までは車間距離があり、客車1台なら出ることができる状況です。

しかし随伴車と2台連続して出るとなると難しい。

 

このような状況では客車は出発しないことが多いです。2台連続して出た方が途中ではぐれたりするリスクが低いからです。

しかし、今客車1台だけでも出ておかなければ次に出られる機会はなかなか訪れないだろうという場合もあります。

また酔っ払いの客がドライバーを急かして「早く出ろー」などと隣で怒鳴るという場合もあります。

こんな時には随伴車がついてこれなくても客車だけ出発することがあります。

 

随伴車はできる限り後に続いて出たいものです。

先に出発した客車が途中で停まって待っていてくれればいいのですが、左に寄って停止することができないような道路では随分先まで行ってしまうこともあるからです。

そんな理由で、左から車が来ているにもかかわらず、無理をして客車の後を追って出発した随伴車が「ガチャン・・・」などというケースが多いのです。

 

今挙げたのは1つの例ですが、実際には状況は様々です。時間帯によっても天候によっても道路の混雑状況によっても判断は変わってきます。

 

そんなわけで、出発時というのは失敗や事故のリスクが非常に高いです。

無事に道路に出て、2台が前後に並んだ状態で走れるようになればホッと一安心といったところです。

お客様のお帰り先は秘密に

もう一つ、運転上の注意とは違いますが、お客様のお帰り先がどこなのか、その情報を客車と随伴車のドライバーが共有する上で注意しなければならないことがあります。

一般的にはお客様にお帰り先がどこなのかを尋ねるのは客車のドライバーだと思います。

それを随伴車のドライバーに伝える時に、離れたところから大声で目的地を言う人がいます。

その場にお客様と代行会社のドライバーしかいない場合にはそれでもかまわないかもしれませんが、周りに人がいる場合には、配慮が必要です。

 

その場にいる人たちに自宅の場所を知られたくないという人もいます。

また仲間と飲食店を出て解散した後、自分だけ家に帰らずに別の場所へ行くような時に、それを仲間に知られたくないという人もいます。

 

また飲み屋の女の子が代行を使って帰宅するような時に、店の客がいるそばで行き先を言うと、それがその女の子の自宅だと店の客に知られてしまうので、それを嫌がる人もいます。

もちろん自宅の番地までは分かりませんが、どこの町かぐらいは特定されてしまう可能性があるからです。

中には最初に嘘の行き先をドライバーに告げて車に乗り込み、その後本当の行き先を車内で伝えるお客様もいらっしゃいます。

そんな場合、随伴車のドライバーにしてみれば、聞いていた行き先とは違う方向へ客車が走っていくので、最終的にどこへ向かっているのか分からないままついていくということになります。

 

客車のドライバーが随伴車のドライバーに「お客様のお帰り先は〇〇町です」と伝えるだけのことなのですが、ちょっとした配慮が足りなかったばかりにトラブルに発展するケースもありますので、注意が必要です。

「お客様のお帰り先」は慎重に取り扱わなければならない個人情報だと認識しましょう。

追走中の注意

客車との車間距離をつめて走行する

追走時には単独走行をする時とはまた違った走り方が必要になることがあります。

目的地に到着するまで、客車と随伴車が前後に2台並んだ状態で走行していきたいものです。

そのためのちょっとしたコツについて書いていきます。

 

基本的に追走中は、客車と随伴車との車間距離はつめ気味で走る方が良いと思います。どのくらいの車間距離で走ればいいのかについては、速度や路面の状態やタイヤのすり減り具合(ちゃんとした山のあるタイヤをはきましょう)にもよりますので一概には言えませんが、客車に急ブレーキを踏まれても安全に停止できるギリギリの距離というのが答えに近いと思います。

 

ではなぜ車間距離をつめて走った方が良いのでしょうか?

理由は2つあります。

1つは当然のことながら、間に他の車両が入ってくるのを防ぐためです。

車間距離が広過ぎると、車線変更をして間に入ってくる車がいたり、道路脇から出てきて間に入る車がいるからです。

「間に入れさせてあげればいいじゃないか、ケチだなぁ」などと思った人はいるでしょうか? 

その気持ち、素晴らしいと思います。私もプライベートで車を運転しているときには、できるだけ周りの車も気持ちよく走れるような運転を心掛けています。

しかし、随伴車を運転している時には事情は少し変わります。

客車との間に一般車両が1台入っただけでどれくらい仕事がしにくいかということは、なかなか言葉では説明しにくいのですが、人によっては軽いパニックになるほど慌ててしまうものです。

客車のドライバーも、随伴車がちゃんとついてきているか心配でとても仕事がやりづらくなります。

 

私は東京や大阪などの大都市ではなく地方都市で仕事をしていますので、交通量も多くなく、間に他の車に入られるなどというのは100本走って1本あるかどうかくらいですが、あまり頻繁に間に入られるようだと「仕事上のミス」とみなされますし、自分にとっても客車のドライバーにとっても良いことはありません。

 

間に入った一般車両がゆっくり走る車だった場合、客車との距離はどんどん開いてしまいます。

そのため、間に入った車と客車との間にもう1台車が入ってしまうということも起こり得ます。そうなるとその状態で追走することは極めて難しくなります。

客車が右左折しても気づきにくいからです。

 

また、客車は交差点を通り過ぎたのに、その後ろの車で信号に引っかかってしまうということも起こり得ます。

そうなるともう追走することは不可能で、客車がどこかで停まって随伴車を待っていなければなりません。早く帰宅したいお客様にとっては、その待ち時間をストレスに感じることもあるでしょう。

 

ですので追走中は「客車との間に絶対に他の車を入れない」という気持ちで走らなければなりません。

合流で1台ずつ交互に入っていくような場合は例外ですが、通常は牽引ロープでつながれているかのごとく後ろにぴったりとくっついて、「間に入ろうかな? 入れるかな?」などという気持ちすら周りの車に起こさせないような運転が、結果的に安全運転につながります。

2台で1台というくらいの意識で良いと思います。

 

車間距離をつめて走るもう一つの理由は、今走行している随伴車が「追走中である」ということを周りの車両に知らせるためです。

随伴車は普通屋根の上に会社の看板を付けていますし、車の側面や後ろに会社のステッカーを貼っているので代行会社の車だなということは誰が見ても分かります。

しかしその車が単独で走行しているのか、追走中なのかということは車を見ただけでは分かりません。

見分けるヒントとしては、随伴車の助手席に人が乗っていれば、その人が客車を運転するドライバーである可能性が高いので、今は単独走行中なのかなという仮説が立てられるくらいです。

 

また代行会社によっては色のついたランプを屋根の上などに取り付けておいて、それを点灯させたり消灯させたりすることによって走行状態を示していることもあるそうですが、それはその会社内でのルールであり、一般人が見ても分かるものではありません。

そんな随伴車が追走中だということを周囲に対してアピールできる方法があるとすれば、その一つが車間距離をつめて走るということになります。

普通以上に車間距離をつめて走っている代行会社の車があれば、その前を走っている車が客車だと考えてほぼ間違いないでしょう。

そして随伴車が追走中だと気づけば、追走しやすいように配慮してくれる親切な人たちが世の中には多いのです。

その人たちに甘えようと言いたいのではありませんが、「今追走してますよ~」ということを周りにアピールしながら走ることは仕事をしやすくし、安全にもつながるものだと思います。

 

代行車は救急車や消防車のような緊急車両ではありませんし、公共の道路を利用しており、なんら特別扱いされるべき車ではありません。

しかし最近では、一昔前に比べると運転代行の認知度が上がり、その仕事内容について理解してくださる方が増えたため、代行車が仕事をしやすいようにはからってくれる、優先してくれる人が多いと感じます。

1台ずつ交互に進むのが普通であるような状況でも、客車に続いて追走車も行かせてくれる人もいます。

私などはできることなら「ただ今追走中」などの旗を屋根の上に立てて走りたいくらいですが、私の勤める会社ではそのようなことはしていませんので、追走中であることは走る態度で示さなければならないのです。

信号機のある交差点の通過

客車を追走中に前方の信号が黄色に変わりそうになったとしましょう。

歩行者用の信号が併設されている交差点では歩行者用の信号が先に点滅しますので、その後、自動車用の信号が黄色に変わることが予測できます。

その時、客車がその交差点を通過するのか停まるのかを予想して走らなければなりません。

 

信号が黄色に変わりそうな時に、客車が早い時期から減速して停まる態勢に入る場合もあるでしょう。その場合には何の問題もなく対応できると思います。

しかし交差点の手前で客車が少し加速したようであれば交差点を通過するつもりなのでしょう。

信号無視にならないように、随伴車も続いてその交差点を突破したいところです。

ここでのコツは、客車の加速に即座に反応して随伴車も加速し、できれば車間距離をもっとつめて、しかし万一客車が急ブレーキを踏んだとしてもこちらもすぐにブレーキをかけられるように足はブレーキペダルにかけておくといったところでしょうか。

 

客車のドライバーが急ブレーキをかけるということはまずありません。乗っているお客様に不快な思いをさせるからです。

交差点の手前で加速したにもかかわらず、どうしても交差点の通過を断念しなければならなくなった場合でも(そもそもそんなことになること自体がそのドライバーの判断ミスですが)、急ブレーキはかけずに停止線をオーバーした先でやんわり停まるなどの運転をすると思います。

随伴車は停止線で停まればよいでしょう。

 

黄色に変わりそうな信号機の通過は簡単そうに思えて以外と難しいものです。

交差点によっては、歩行者用の信号が点滅してから車用の信号が黄色に変わるまでに通常よりも長い時間がかかるような設定になっているものもあります。

そのような信号の手前で早くから減速してしまうと通過できたはずの交差点を通過できないことになってしまい、効率の良い運転になりません。

よく利用する道路で、その交差点の特性を知っている場合であれば適切な対応が取れると思いますが、そうでなければ上手くいかない場合もあるのです。

 

その信号で停まっても良いし、通過することもできるというタイミングで、客車のドライバーがどちらを選ぶかということは、そのドライバーの性格にもよりますし、お客様がどのような運転を期待しているかや、次の仕事への配車の状況によっても変わってきます 。

客車がどんな運転をしても、柔軟にそれに合わせた対応ができるようにしていきたいものです。

 

 

車線変更

片側2車線ある道路の走行車線を、客車と縦列で走っているとしましょう。

そして客車が右にウインカーを出しました。そのとき追越車線を車が走ってきていなければ、客車はそのまま右のレーンに車線変更し、続いて随伴車も車線変更すれば問題ありません。

しかし少し難しいケースとして、これから車線変更しようとしている追越車線を、後ろから車が走ってきている場合があります。

このような場合に安全に車線変更を遂行するコツは次の通りです。

 

まず客車が右ウインカーを出したら基本的には随伴車が先に右の車線に車線変更します。

そうして後ろから走ってきている車を自分の車でブロックしておいて、その後「はい、どうぞ」と言って随伴車の前に客車を入れるというのが一般的です。

客車が車線変更を終えてから自分もと考えていると、後ろからきた車が客車の後ろについてしまい、随伴車がその後ろに入るということになりかねないからです。

先にも話した通り、客車と随伴車の間に他の車を入れないようにする工夫が必要です。

 

別の例を見てみましょう。

走行車線を走っている客車が急に右に車線変更しましたが、随伴車の右隣を一般車両が走行していて客車につづいて車線変更することができない場合です。

客車がこのように、随伴車がついてこれるかどうかよりも車線変更を優先するような運転をする場合というのは、前方が工事中で右によけなければならないとか、停止車両や障害物があるのでそれを避けるというような、一時的でかつ緊急の車線変更の場合があります。

もう一つはすぐ先の交差点で右折しなければならないことに気づいた、もしくはお客様から急にそのような指示を受けたというような理由が考えられます。

そのような時には慌てずに落ち着いて、車線変更をした客車の後ろを走っている車の後ろに入る努力をすることです。

短時間で右へ車線変更することができずにそのまま走行車線を走りつづけていると、客車がすぐ先の交差点で右折してしまい、随伴車はそのまま直進せざるを得ないなどという事態にもなりかねません。

だからといって右車線を走っている車の列の中に強引に車線変更をして割って入って行くのはもっと危険です。

安全に配慮しつつ、客車のせめて2~3台後ろくらいには入りたいものです。

そして2~3台先の客車は随伴車からは見えにくいのですが、客車の次の動向に注意して、対応できるようにしましょう。

 

余談になりますが、客車についていくのに必死なあまり、時に無理な車線変更などの乱暴な運転をしてしまうドライバーもいるようです。世間一般に運転代行のイメージが良くないことの一因にもなっていると思います。

ただ、追走するという特殊な走り方を強いられているため、やむを得ず不本意な運転を余儀なくされてしまうこともあるかと思います。

それを大目に見てくださいというつもりはもちろんありませんが、追走中の随伴車はそのような突拍子もない行動を取る可能性が高いものだと認識しておくことは、事故のリスクを減らすのに役立つかもしれません。

客車との間に他の車両が入った時

車線数が減少する場合や別の道路からの流入などで、車が合流する場面があります。

客車と随伴車との間に他の車両を入れたくないのが本音なのですが、状況をよく見極めてスムーズに合流しましょう。

交互に1台ずつ車が入っていくような状況ではもちろん客車との間に1台入ることになります。そしてその1台がその先でもう1台車を入れるというようなことがあると、間に2台入ってしまいますので非常に運転しにくくなります。

そんな場合の走り方について見ていきましょう。

 

客車が背の高い車で、間に入っているのが背の低い車であれば、随伴車から客車の姿を見ることができます。

しかしその逆だった場合には見えません。その状態で走っていくのは非常に不安なものです。

客車に対してその後ろの車の速度が遅いと客車との距離はどんどん広がっていきます。あまりに距離が開くとその間にもう1台入ってくることだって起こります。

このような状況では客車がどの車なのかを見間違えてしまうことも起こります。

「今交差点を左折した車は客車だったかな? だったら自分も左折しなければならないし、でも客車に似ていたけど客車じゃないかもしれない」

こんな不安が頭をよぎったりしたら、心配で仕事どころじゃなくなります(仕事中なんですけどね)。

そんな不安をいくらかでも減少させるための方法としては、出発前に客車をよく観察して客車の情報をできるだけ多く持っておくことです。

特にテールレンズやハイマウントランプの形状や位置をよく覚えておくとよいでしょう。

カーブを曲がるときや坂の昇り降りなどの際にわずかに見える車体の一部で、それが客車かどうか判別できるからです。 

車名や色だけしか覚えていないと、遠くから見たときにその車が客車かどうか分からないことがあります。

夜だと紺色もグレーも紫も茶色もみんな黒に見えてしまいますし、似た形の車だと、見る角度によっては車名が分からないこともあります。

ですので、テールレンズなどの発光する部分の形状や、ルーフにキャリアを積んでいるとか、ジムニーなどのようにハッチにスペアタイヤがついているとか、客車の特徴を少しでも多く覚えておくことが有効です。

随伴車は屋根の上に看板をつけていることが多いので、客車からは随伴車がついてきているかどうかバックミラーで確認しやすいです。

あまり遠く離れてしまうようであれば、客車が左に寄って停まって随伴車が来るのを待ってくれることが多いと思います(各会社のルールや客車のドライバーにもよると思いますが)。

再び客車と2台連なって走れる状態になるまで、とにかく客車と違う道を行かないように注意して走行しましょう。

 

追走中に注意しなければならない点は他にもたくさんありますが、今回は代表的な事柄にしぼってお伝えしました。

到着時の注意

そんなこんなで、幾多の困難を乗り越えてようやく目的地に到着しました。

到着地のほとんどはお客様のご自宅でしょう。

中には到着地が別のお店ということもありますし、ラブホテルだったり愛人のアパートだったりということもあります(すみません余計なことを・・・)。

 

今回はお客様のご自宅に到着した際に随伴車がとるべき行動と、その時の注意点について述べていきたいと思います。

お客様の自宅の駐車場所が道路に面している場合

この場合、一般的には駐車スペースに近い道路上の端の方に随伴車を停めることになると思います。

そして客車が安全に駐車スペースに入れるように、随伴車のドライバーが客車の後方を確認しながら懐中電灯などを振って客車を誘導します。

客車の駐車が完了したら代行代金を伝えて集金し、必要に応じて領収書などを発行します。

以上のような流れが基本です。

 

 

お客様の駐車スペースが、家の敷地の入口から奥まった場所にある場合

この場合、代行会社によってルールは様々だろうと思いますが、私が勤めている会社では、お客様の自宅の敷地内には随伴車を乗り入れないことになっています。

私の住む田舎の県には広い敷地を持つ家が多く、門を入ってからかなり奥の方まで客車を走らせる場合があります。

そのような時は随伴車を門の外に停めて、随伴車のドライバーは集金に必要な道具一式(お釣りや領収書やボールペンなど)を持って客車のところへ向かいます。

随伴車へ何度も戻ってこなくても、お客様のところで一度で集金を済ませてしまえるようにするためです。

随伴車のエンジンを切る

お客様の自宅に到着したら随伴車のエンジンを切りましょう。

到着してから客車を駐車し、集金を終えてその場を立ち去るまで2~3分くらいのことですが、夜中にエンジンをかけたまま随伴車を停車させておくことは付近の住民の安眠妨害になるからです。

また無線機から聞こえてくる声も、寝静まった住宅街では場違いなほどうるさく響くものです。

 

「代行会社がうるさい」という近隣住民からの非難は代行会社にだけ向けられるのではなく、それを利用しているお客様にも向けられることがありますので、お客様のためにも静かに行動しなければなりません。

特に頻繁に代行を利用されるお客様は、「あそこの旦那さんは毎晩毎晩飲み歩いて・・・」などと近所で噂されたりすることも田舎では多く、お客様に肩身の狭い思いをさせてしまいます。

お客様によっては代行を利用して帰宅したことを近所に知られるのを嫌い、自宅の前まで随伴車を来させない人もいます。

その場合には限度もありますが、一つ手前の角で随伴車を停めてそこからは歩いていくなどという対応を取ることもあります。

なかには「代行運転はここまででいい、ここから先は自分で運転して帰る。あと100メートルだけだから」などと言うお客様もいらっしゃいますが、それはやめてもらいます。

たった100メートルでも飲酒運転ですし、その間に事故を起こす可能性もあるからです。

 

私がこの仕事に就くまでは意識したことはなかったのですが、このように代行で帰ってきたことを近所に知られたくないというお客様は思いのほか多く、驚きでもありました。

私自身も客として運転代行を利用したことは過去に何度もあるのですが、近所の目などを気にしたことは一度もありませんでした。

このことを会社の人たちに話したところ、それは私が「県外からやってきたよそ者で、家族もいない独り者で、地域社会と関わりを持っていない変わり者だから」だということでした。ナルホド。

 

しかし運転代行を後ろめたい気持ちで使うなんて、それに従事している者としてはちょっと寂しい気持ちにもなるってもんです。

もちろん誇らしげに利用するサービスではないかもしれませんし、この仕事だって、憧れて就くような職業ではないでしょう。むしろその反対であるとさえ思います。

でもお客様に金額を伝えたり、「ありがとうございました」とお礼を言うにも小声で囁くように言うことを要求されるお客様を見ていると、まるで相手を軽蔑しながら風俗通いをしている客、自分の娘にはそんな仕事をさせたくないくせに、自分は相手を見下しながらお金を払ってサービスを受けている客みたいに見えてしまいます。

別にこんなお客様に対しても怒りは感じませんが、もっと堂々として「いつもありがとうね」と爽やかに言ってくれるお客様の方が好感を持てるのは当たり前ですよね。

 

話が脱線してしまって済みませんでした。元に戻しますが、お客様の自宅に到着した時の注意点をまとめると、

随伴車のエンジンを切って静かにする。というか随伴車の存在を消す。

客車を誘導する時にも「オーライ、オーライ」などと声を上げずに懐中電灯を使う。

会話は小声でおこなう。

業務が終了したら速やかにその場を立ち去る。

 

つまり随伴車や代行会社のドライバーはできるだけ目立たないようにして、できることならお客様が自分で車を運転して帰ってきたかのように見せることができたなら(誰にって? 近所の人にですよ)、それが良い代行会社だというのが私の認識です。

賑やかな歓楽街から寝静まる住宅地へと移動するのですから、その環境の変化は大きいです。

出発地の気分を引きずったまま到着してしまうとそれが言動に表れてしまうことがありますので注意しましょう。

 

運転代行業においては、客車を運転するドライバーが主役で、随伴車のドライバーは別に誰でもいいと思われがちですが(業界内での話です)、実際には随伴車のドライバーの任務は多岐にわたり、また追走特有の運転の難しさというものもあるものです。

もしこれからこの仕事に就こうと考えている人がいらっしゃったら、この記事が何らかの形でお役に立てれば嬉しいです。

 

長文の記事でしたが、ここまで読んでくださってありがとうございました。

また折に触れて代行の記事を書いていこうと思いますので、よろしかったら読んでみてください。