自宅近くの電柱にカラスが巣を作りました。
そんなことがあるものなのかと思ってちょっとネットで調べてみると、たくさんの事例が出てきました。
割とよくあることなんですね。知りませんでした。
カラスは木の枝などで巣を作るそうですが、洗濯物を干す針金のハンガーが巣の材料に使われることも多いそうです。
ベランダや庭にハンガーを置いていると、カラスが持って行っちゃうんですね。
そしてそんな金属が電線に触れたり、木の枝であっても雨で濡れたりするとショートして停電の原因になることもあるそうです。
あるそうですというより、私たちが想像するよりもずっと多いそうなんです。
2017年6月19日の朝日新聞DIGITALの記事によると、中部電力の名古屋支店が管轄するエリアだけで1年に100件の停電があり、そのうち約10件がカラスの営巣によるものだったそうです。
「名古屋支店では、素材に金属が使われるなど停電リスクの高い約2100カ所(略)の巣を撤去した」
「1日約100カ所撤去したこともある」
などの記載もあります。
また別の記事によると、京都駅構内で停電が発生し商業施設など約1200軒が停電。
スーパーやカフェは休業を余儀なくされ、銀行のATMも利用できなくなったとのこと。
この停電も、電柱上にカラスが作った巣が漏電で燃えたことが原因だったそうです。
各電力会社のサイトでは「電柱にカラスの巣を見つけたらすぐに連絡してください」と呼びかけています。
私はスマートフォンを手に取りました。
しかし電話をかけるのではなく、巣の写真を撮ったのでした。
「連絡したら巣が撤去されちゃうじゃん」
「カラスの雛(ひな)はどうなるの?」
そんな気持ちから電話をかけることをためらってしまったのです。
ネット上には高所作業車に乗った作業員が大きなハサミのようなもので巣をもぎ取っている動画があります。
撤去の様子を解説した記事もあります。
しかし巣の中の雛がその後どうなったのかということは伝えられていないのです。
伝えられない事情があるに違いありません。
だとすれば、私は通報することを躊躇せざるを得ないのです。
知っていて通報しないのは罪でしょうか?
このままだと明日にも停電が起きるかも?
その停電が原因で熱帯魚が凍えたり、イグアナが風邪を引いたりすることだってあるのでは?
私の他にも気付いている人はいるんじゃないのかな? 私と同じように黙っているだけで。
上の階のベランダからだともっとよく見えるはずだぞ、上の階の住人は気付かないのか?
そんなことも考えました。
私が読んだ記事によりますと、通報してもすべての巣が撤去されるわけではないようです。
その理由は、撤去してもまた別の電柱に巣を作る可能性があり、その巣の方が停電のリスクが高い場合もあるからなのです。
そのため、まずは今の巣の状況を確認して、停電リスクが低ければ撤去せずにそのまま残し、夏が来て雛が巣立った後に撤去するという場合もあるそうです。
さぁどうしようか?
もしこの巣が電線をショートさせないものであれば、電力会社に通報してもしなくても結果は同じ。問題無し。
もしこの巣が電線をショートさせるものであれば、通報すれば巣は撤去されて雛はお母さんとサヨウナラ。
通報しなければいつかショートして、やはり雛はお母さんとサヨウナラ。
でも撤去する必要の無い巣であったとしても、万一のことを考えて念のために撤去されちゃう可能性だってあるのではないか?
そう考えると通報する方が雛にとって危険度が高い。
通報はマズイ。
いったい何でこんなところに巣を作ったんだよ。
電磁波だってすごく出ているだろうに。
安全な山の中の木の上に作れば良かったじゃないか。
「からす なぜなくの からすはやまに かわいい ななつの こがあるからよ」
(「七つの子」作詞:野口雨情 作曲:本居長世)
こんなしみじみと胸に響くいい歌があるのに、知らないの?
キミのことを歌ってるんだよ。
よし、こうなったらオレは停電を選ぼう。
だいたいこの近所にイグアナを飼ってる奴なんていないだろうよ。
もし停電したら、停電したら、その時は、暗闇の中で雛の冥福を祈ろうじゃないか。
そんな決意で私は通報していません。
毎朝ベランダから巣を確認するのが日課になりました。「今日も無事かな?」と。
やがて巣立っていく日が楽しみなような、淋しいような。
それにしても、1年間に全国で一体いくつの巣が撤去されていることでしょう?
本当に残酷な話じゃありませんか。
自分の可愛い子供がいる巣を鉄のハサミでもぎ取られる。
親鳥は鳴きながら空を舞い、残虐行為の一部始終をただ見ているしかない。
助けに行くことのできない自分の無力さに打ちのめされ、二重に苦しむことでしょう。
こんな可哀そうな出来事が毎年何万件と起きているのです。
電力会社によっては巣の撤去に億単位の費用をかけているとも聞きました。
そんな大金をカラスの家族を苦しめるために使うのなら、電柱に巣を作らせないような対策に使えないのか?
予算が足りないなら電気料金に10円くらい上乗せしたり、寄付をつのればいいじゃないか?
毎年春が来るたびに「カラスの巣はないか?」「カラスの巣はないか?」と職員が町中を探し回っているそうですよ。
スマホを覗きながらポケモンを探してウロウロしている暇人と変わらないじゃないですか。
巣を撤去しても撤去してもまた作られて、まるでイタチごっこだと。
昭和の頃からこんなことやってるんだと。
大丈夫ですか?
本当に日本の話ですか?
先進国じゃなかったんですか、この国は?
私、あまり汚い言葉を使いたくないので口にはしませんが、心の中では罵ってますよ。ここには書けないような言葉でね。
電柱を引っこ抜きなさい!
電線を地面の下に埋めなさい!
カラスは山の木に巣を作りなさい!
それまでの暫定的な措置として、全国のすべての電柱に安全なカラスの巣を取り付ける。
電気を通さない材質でできた、雛にとって寝心地の良い、雨よけのひさしのついた、敵から襲われにくい、親鳥がとまり易いとまり木のついた、デザインもシャレたカラスの巣。
名乗りを上げるメーカーはいないのか?
電力会社に巣を売り込んで、各電柱に1個取り付ける。
国土交通省のサイトを見ると、日本全国の電柱の本数は平成28年時点で3578万本だそうですよ。
巣1個1980円(税込)で販売すればどれだけ儲かるんですか?
「電柱を立てる時には必ず巣とセットでなければならない」と鳥獣保護法を改正すればいいじゃないですか?
野生動物が安全に道路を横断できるように、アニマルパスウェイと呼ばれる歩道橋が作られているんですよ。
クリスマス島ではカニが道を渡れるように地下通路や歩道橋なんかも作られているんですよ。
安全なカラスの巣も必要でしょ。
アイリスオーヤマ! 一体何やってんだ!
呑気に猫のケージなんか作ってる場合じゃないぞ。
カラスの巣作れ、カラスの巣。はよ。