荒川光のブログ

Hikaru Arakawa's blog

モノに対して「してあげる」っておかしくない?

キーボード クリック

 

「ここをクリックしてあげて~」

YouTubeでプログラミングに関する動画をよく観るのですが、観ていて気になることがあります。

「~してあげる」って言う人がけっこう多いのです。

「してあげる」の何が問題なの? とお思いでしょう、きっと。

大問題なのです。

こんな風に使われているんですよ。

「ここをクリックしてあげてください」と。

 

 

 

なんじゃそりゃって思いませんか?

誰に対してしてあげるんだよと。

してあげて誰が喜ぶのと。

パソコンのためにしてあげるんでしょうか?

 

「ここにカーソルを合わせてあげて」

「このボタンをクリックしてあげます」

ゲェッ

キモッ

身震いしてしまいます。

違和感を覚えるなんてもんじゃないですよ。

サブイボが立つほどです。

 

以前からテレビなどでもこういうおかしなものの言い方をするのを耳にすることはありました。

しかしこれほど頻繫にではなかったと思うのですが。

ユーチューバーにそういう人が多いのか、プログラマーにそういう人が多いのか、それともたまたま私が観た番組に多かっただけなのかは分かりません。

しかしその言い方が気になって番組の内容に集中できないくらいです。

30分間の動画の中で何十回となくこの「してあげて~」というのが登場するのです。

「また『してあげて~』が出てくるんじゃないか」とハラハラしてしまって、安心して観ていられません。

 

こんな風にモノに対して「してあげる」っていう言い方、あなたはどう思われますか?

私は正気を保つのが難しいくらいに血圧が上がってしまうのですがね。

動画の中から「してあげる」という言葉だけを拾って自動で削除してくれるアプリの完成が待たれます。

 

誰かコメント欄などから指摘してあげればいいのにと思うのですが、する人はいないのでしょうか?

まぁ私もしていませんけれども。

 

ちなみに今言った「指摘してあげれば」の「してあげる」は適切だと思って使いました。

モノに対してではなくそのユーチューバーに対して言っています。

また恩着せがましい感じになるので普段の会話では使いづらいのですが、上のような文脈は「してあげる」を使用するのに丁度おあつらえ向きなのです。

ここで使わなければどこで使うんだというくらい使用頻度の少ない言葉です。私にとっては。

 

良かったね、オレの中の「してあげる」君

やっと今、君は水を得た魚のようにピチピチと泳ぎ出せるんだ

※意味不明ですね。気にしないでください。

 

モノに対して「してあげる」と言う心理

私が想像するに、モノに対して「してあげる」という言い方をする状況というのは「誰かが誰かに何かを教える」ような場面が多いように思います。

「エンジニアのユーチューバーが視聴者にプログラミングを教える」

「料理の先生が生徒に料理を教える」

このような状況の時に発生しやすいように思うのです。

 

 

 

ではなぜこのような状況下で発生しやすいのか?

それは先生が生徒に「~してください」とストレートに言うのをためらう心理があるからだと思います。

教える人が教わる人に「この時にはこうしてください」と言うのは何ら不適切ではありません。

やり方を教えているのですから必然的にそのような言い方になるはずです。

にもかかわらず繊細な彼らはこう考えてしまうのです。

「『~してください』という言い方は少し強くはないだろうか?」

「教える側の立場だとはいえ命令口調になってはいないだろうか?」

「もっとソフトな言い回しはできないだろうか?」

 

そこで考え出されたのが「してあげてください」なのです。

誰かのため、あるいは何かのために「してあげて」とお願いするニュアンスを含ませることで、「先生から生徒への一直線の指示」ではなく「誰か(何か)のためにこうしましょうよ」という提案のような雰囲気を醸し出すことができる。

このように私は想像します。

 

優しいんですね、みなさん。

視聴者の気分を想像してとても気を遣って話されているんですね。

それはそれで良いことだと思います。

でもそこまで気を遣う必要はないのですよ。

 

赤ちゃんや子供は弱い存在です。

そのためしばしば手加減したものの言い方がなされることがあります。

「おそとへいこうね~」

「もうねましょうね~」

 

さらに度が過ぎるとこうなります。

「おちょとへいこうね~」

「もうねまちょうね~」

 

これらは強い言葉によって幼子にダメージを与えないように配慮したものだと思われます。

その効果や是非は別としてですけれども。

 

しかし私たちは赤ちゃんや子供ではありません。

傷付きやすい敏感肌の乙女でもありません。

ウブで儚いガラスの心も持ち合わせておりません。

人差し指でポチっとするだけのことを伝えるのに臆病にならなくていいのです。

少しばかり強い言い方をしただけで視聴者が離れていくのではと不安なのですか?

 

私の考える最適解はコレだ

 

クリック

 

「ここをクリックしてください」

清く正しく美しい最適な言い方はこれです。

自然体で、さわやかに言いましょう。

「ここをクリックしてください」と。

 

これでいいんです。

自信を持ってビシッと言えばいいんです。

「ここをクリックしろ」と命令しているわけではないのですから。

むしろ命令口調でもいいくらいですよ。

英語の表現だと「ここをクリックしなさい」は普通に使われているのではないでしょうか?

道路標識の「止まれ」を見て「止まれとは何だ、止まってくださいだろうが」と怒り出す人はいないでしょう?

 

「高評価」と「チャンネル登録」が大好物のユーチューバーのみなさん。

「してあげる」を無くせば高評価「シ・テ・ア・ゲ・ル」。